食事の質を上げて免疫力UP!②

§ 食・健康 §

免疫とは?

「免疫」とは文字の通り「疫病から免れる」こと。体の中に細菌やウィルスなどが入ってきた時、自身の細胞と区別しそれらを「敵」とみなして戦って体を守るシステムです。私たちのカラダは60兆個の細胞で作られています(数には諸説あり)。その中に免疫を専門とする免疫細胞があります。身の周りには空気中を含め至るところに細菌やウィルスがいますが、それらを吸い込んだり粘膜に付着しても病気にならないのはこの免疫細胞による「免疫」というシステムが働いてくれているおかげなのです。免疫には大きく分けて「自然免疫」と「獲得免疫」の二つがあります。
★自然免疫
生まれつき持っている免疫のシステム。マクロファージ、顆粒球、樹状細胞、NK(ナチュラルキラー)細胞と呼ばれる自然免疫細胞があり、病原体が体に侵入すると一番初めに発動される原始的な防御機能です。
★獲得免疫
自然免疫が生まれつき備わっている防御システムなのに対して、獲得免疫は感染することで身につく後天的な免疫システムです。T細胞、B細胞などからなり、自然免疫系で撃退しきれない場合に発動します。

 

=免疫は連携プレイ=
まずはパトロール的な役割を果たしている自然免疫細胞のマクロファージが病原体を発見!マクロファージと顆粒球(主に好中球)がその病原体を食べて殺します。NK細胞も独自のやり方で感染した細胞を破壊しマクロファージがそれを食べてお掃除。さらにマクロファージは獲得免疫細胞の仲間であるヘルパーT細胞に「こんな病原体がいたよ!」という信号を出します。その信号を受けて今度は獲得免疫が作動!T細胞が病原体と戦い、B細胞が病原体に対する抗体を生産します。と同時に病原体の情報を記憶し再侵入してきた時に備えます。この様に免疫のシステムは「自然免疫→獲得免疫」の連携によって働き、そのおかげで私たちのカラダは守られています。

この病原体に対抗する力の事を「免疫力」といい、病原体を殺傷する力が強いと免疫力が高いと言われます。免疫力が高いと病気になるリスクも低くなるのでぜひとも高めていきたいところ。しかし免疫力UPは一日にして成らず・・・。日頃の積み重ねがいざという時の力となってくれるのです。

食事から見る免疫力の高め方

栄養素のうちカロリー換算できる「炭水化物・脂質・たんぱく質」を三大栄養素といい、カロリー換算の出来ないビタミン・ミネラルを含めて五大栄養素と言われています。三大栄養素には体に負担がかかりにくく代謝機能が活性化するバランスがあります。
総量ではなく3つの栄養素の割合がポイント!一般的なイメージとしてカロリーというと「炭水化物・脂質・たんぱく質」を合わせた総カロリーを指していることが多いですが、大切なのは総カロリーではなく三大栄養素の内訳バランスです。

厚生労働省が5年に一度発表している日本人の食事摂取基準からカロリーの理想の内訳バランスを見てみましょう。

◎エネルギー産生栄養素バランス(%エネルギー)

年 齢 炭水化物 脂質 たんぱく質
18~49歳 50~65% 20~30% 13~20%
50~64歳 50~65% 20~30% 14~20%
65歳以上 50~65% 20~30% 15~20%

2020年は更新される年に当たり前回の2015年版より年齢が細分化されました。各栄養素のパーセンテージを足すと必ずしもぴったり100%にはなりませんが、大切なポイントは2点です。「炭水化物が全体の半分以上の割合であること」「脂質の割合を全体の1/4程度に留めること」

数値で言われても実際の食事に置き換えた時のイメージが沸きにくいもの。ですが実は非常にシンプルな事で解決できます。上記のエネルギー産生栄養バランスを実現する為に適している基本の献立は『 一汁一菜&しっかりごはん』です。いわゆる日本の定食スタイルで「主食・主菜・副菜」で組み立てられています。過去記事にも書きましたがここでもう一度おさらいをしましょう。

【主 食】
「ごはん・パン・麺類」などのいわゆる炭水化物。活動のエネルギー源や体温のもとになります。

【主 菜】
肉、魚、大豆製品、卵などのたんぱく質を使った一品。細胞、筋肉、骨、血液など体を作る材料になります。

【副 菜】
野菜・海藻・きのこ類など、ビタミンやミネラル、食物繊維が多く含まれる食品を使った一品。体の調子を整えてくれます。

これを一汁一菜の献立を当てはめてみると「主 食・・・ごはん(お米)」「主 菜・・・肉や魚を使ったメインディッシュ」「副 菜・・・野菜やキノコ海藻などを豊富に入れた具だくさんお味噌汁」になります。

イメージとしてはこんな感じの献立。いわゆる和定食ですね。

副菜で使われる食材は主にビタミンやミネラルを豊富に含む物です。三大栄養素はカラダを作る為の材料ですが、いくら質のいい材料があってもそれを代謝してカラダが使える形に変換出来なければ宝の持ち腐れ。ビタミンやミネラルは代謝をサポートしてくれる栄養素です。各栄養素にはそれぞれの働きがあり、どれが良くてどれが悪いという事はありません。材料とサポートする栄養素を必要量しっかり摂ることが大切。

まずここをおさえた上で免疫力UPに一役買う食材を一部ご紹介します。

☆良質な食物繊維、海草とキノコ類
海藻、きのこ類ともに抗酸化作用に優れた成分や食物繊維が豊富に含まれています。食物繊維は腸内環境を整える役目があります。食物繊維の他にも海藻類はミネラル、きのこ類はビタミンを豊富に含んでいます。

☆丸ごと食べる、煮干しなどの小魚
一物全体という言葉がありますが、食材丸ごと食べるとことが栄養的にバランスがよいと言われています。まさに「食べ物の命をそのままいただく」という感じ。魚なら煮干しや しらすなど、丸ごと食べられる小魚類がおすすめです。

☆発酵食品(味噌、納豆、キムチ、チーズ、ヨーグルトなど)
発酵食品はその土地や場所にいる微生物によって、元の食材にはない新たな風味が生み出された物です。麹菌・酵母・乳酸菌など私たちの健康をサポートしてくれる成分が豊富に含まれています。一例を挙げると、味噌、醤油、みりん、かつお節、ぬか漬け、納豆など、日本には素晴らしい発酵食品がたくさんあります。微生物には免疫にとって重要な腸内の状態を整える力があります。

☆野菜
野菜にはビタミンや食物繊維、フィトケミカルと呼ばれる物質が豊富に含まれています。特に旬の野菜にはその季節に必要な栄養やパワーがギュッと詰まっています。季節の根菜類、緑黄色野菜を摂ることでエネルギー代謝の助けとなり免疫力アップにも繋がります。

 

食べた栄養を消化吸収できていますか?

最近は腸内細菌を整えることに非常に注目が集まり、発酵食品や乳酸菌を積極的に摂る傾向があります。免疫を担っている免疫細胞の約70%が腸にあると言われていますので、腸内細菌の状態を整える事は決して悪い事ではありませんが見落としがちな事があります。それは食べたら終わりではないということです。私達が自分の意識と意志で出来る事は食べる事ですが、その後も食べ物の旅は「胃→小腸→大腸」と続きます。食べた物が消化され必要な栄養は小腸から体内へ。不要な物や役目を終えた物は大腸を通って体外へ排出しています。何を食べるかも大切ですが「口→胃→小腸→大腸→肛門」の流れが活発でスムーズであるかどうかが免疫においても重要です。 

口から肛門までは「消化管」と言われており、よく“ちくわ”に例えられるように一本の管になっています。この一本の管のどこかが詰まり流れが悪くなると必然的に全体の流れも滞ります。私達は便秘気味だと腸だけを整えようとしたり、胃がもたれをすると胃の調子だけを整えようとしますが、ピンポイントでみても根本解決にならないのは消化管が一本の管として繋がっているからです。

消化管の働きがスムーズじゃないな・・・。そう思ったら食べ物の消化ルートと逆のルートを見直してみましょう。

<消化の流れ>
 口 → 胃 → 腸

<見直す時の流れ>
 腸 →  胃 → 口

不調の発端を流れにそって見ていくと「口」に行き当たります。「口」とはまさに食べる器官。自分の意識で出来るところです。健康にいい食べ物は? 免疫力を上げる食べ物は?どんなにカラダにいい食べ物の情報を集めたとしても “効率よく消化吸収できる食べ方” をしなければ意味がありません。

食べた栄養を消化吸収するには「ながら食べ」「早食い」を辞め、しっかりよく噛んで食べることです。私たちが意識して出来るのはここまでですが、栄養を消化吸収しやすい状態を作ればカラダもそれをちゃんとキャッチして張り切って消化吸収してくれます。つまり私達が出来る事とカラダの連携プレイにがスムーズに行われることによって、初めて食べた物を活かす事ができるのです。

免疫力を高めるには何か特定の物だけを積極的に食べたり飲んだりすればいいというものではありません。食事全体の献立が「主食・主菜・副菜」の組み合わせになっているか?主食のごはんの量は足りているか? カロリーは控えるではなく、体に負担がかからないバランスでしっかり摂る。その上で免疫力を上げるサポートをしてくれる食材を少し多めに取り入れてみるのがお勧めです。そして食べる時は唾液が出るのを感じながらよく噛んで、次に働いてくれる胃への負担をかけない様にしてあげましょう。

免疫力アップは一日にしてならずですが、日頃の食習慣、生活習慣を変えていくことで確実にカラダは変化していきますので、できるところからやってみて下さい。

参考記事:「食事の質を上げて免疫力UP!①」」「一汁一菜&しっかりごはん」「知らないと損をする噛むことのメリット」

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